2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

雨の通る音。 解除をし忘れたアラームみたいに、望まないタイミングで窓を叩くから、驚いた眠気は逃げてしまった。せっかく一筋の光も漏らさぬように閉じられたカーテンを、愛おしく思い始めていたところだったのに。夜明け前の空の気紛れに、明日が来なけれ…

僕らは軽口なんかで、記憶を彩り直したり、君の不在を埋め尽くしているよ。七回忌とはそんなものだったなんて知らなかったな。 六年前の君には、どうでも良いことなのかもしれないけれど、世界には知る権利と同じくらいに、知らずにおく権利があるはずだった…

眠れない君に付きあって、午前四時の朝焼けを眺めていた。 薄い雲。陽をよく透しそうな雲だった。同じ空は二度とないというのに、何度も目にしたような姿をしているから、君は何かを思い出そうと息を潜めて身体を預けている。 僕は「西陽よりも朝陽のほうが…

片足だけ踏み込んだ前線。 咲き誇る前に気づいたのは初めてかも、そんな君の言葉で僕にも見つかってしまった桜は少し震えているようだった。 肌寒い日曜日。街は雲の流れを読めず、大粒の雨に打たれたばかり。それでも過ぎ去った温度を信じて花は目覚めよう…

君を乗せてペダルを漕ぎながら感じた、あの穏やかな風を覚えている。 コースターのような海岸通りが帰路だった。スピードに掻き消されそうな声に振り向いて、聞き返して、誤魔化されて、また笑う。もう視点を変えただけではどうにもならない色や背景は、忘れ…