眠れない君に付きあって、午前四時の朝焼けを眺めていた。
薄い雲。陽をよく透しそうな雲だった。同じ空は二度とないというのに、何度も目にしたような姿をしているから、君は何かを思い出そうと息を潜めて身体を預けている。
僕は「西陽よりも朝陽のほうが落ち着くよな」と、どこからか借りてきたような台詞に、笑いながら否定した日のことを思っていた。十年近くほったらかしにされていた記憶は、他よりもずいぶんと色褪せていて、どんなふうに笑い飛ばしたのかは覚えていない。それでも現在、同じように訊ねられるのなら、素直に「分るよ」って返すのだろう。そして、僕の返事にまた笑っているような気がした。


鳥が鳴き始めた頃、君が寝息をたてていることを知って苦笑いをする。手持ち無沙汰のくせに、気づくことはいつだって得意じゃない。
悔しいのは、次の夜。今度は僕が眠れない夜を過ごすこと。
その時、君は付き合ってくれなさそうだから、狡いなって思うんだ。