見上げた月があまりにも綺麗な弧を描いていたので、あれは優月の“月”なんだよ、と娘に教えたことがある。以来、彼女は陽が沈むと思い出したかのように「ゆづきの おつきさまはぁ?」と外に連れ出そうとし、僕も晴れた夜ならば「うさぎさん、お餅をついているかな」なんて言いながら手を引かれ、曇り空の時も「隠れんぼしているかもね」と結局応じることになった。まだ月の兎が絶滅していない彼女の世界も微笑ましいかった。
そのうち彼女の興味も月から星へと変わり、点を線で結んだ自分の十二星座の大きさに驚くのだろう。そして、あれは全天で二番目に大きい星座なんだよ、と知識をひけらかした僕は、思っていた以上の感動が返ってこなかったな、と気落ちするのだと思う。
星座の数には限りがある。いつか八十九個目の星座を彼女が象って、僕らに教えてくれることを愉しみにしている。