2004-01-01から1年間の記事一覧

分かってほしいと言うには大人びてしまった僕らだから、翌年に持ち越してしまうものは多く、だけれど馬鹿みたいに酔おうと思う。それは忘れる為ではなく笑う為に。下らない話で花を咲かせても、昇る陽に気がつくまでは笑声を発し聴いていたい。大人びてもそ…

雨は嫌いじゃないと話していた君なのに、今日の時雨には憂鬱の表情を浮かべていた。理由は何でも良かったのだと思う。雨の代わりに雪が降っていても、何も降らす事のない冬空だったとしても。君はカモフラージュされた溜め息を吐き出すのだろう。相変わらず…

直感

きっと僕らは全壊しない程度に少しずつ傷を増やし続けている。そこで全てを終わらせるのが恐いからなのだろうな。そうやって泣き出す時間はこれからも有り触れているのかもしれない。 僕は君が悔いている事を改めて口にするほど偉い人間ではなかった。 だか…

北風に雲が千切れ離れさせてゆく様を見つめながら、私はあの雲によく似たものを知っている。そんな彼女の言葉を誰かが思い出してしまったから、薄情にも褪せはじめていた色彩が僕にも甦ってきた。 彼はジョンレノン・ドリーマーで編まれたマフラーを居心地が…

窓を叩く雨のリズムに口笛を奏でる。 朝から蛍光灯に照らされて過ごす休日。スロウ再生ってこんな感じ?と訊いてくる君に笑う。それならば巻戻しのボタンもあれば良いのに。まるで子供の発想だとまた声を上げた。 わずかに届く薄暗い陽を拾いながら、方々に…

札幌の夜はもう息が白い。 この季節になると思い出す友人がいる。彼は僕らにオニオンと呼ばれていた。別に玉ねぎ頭だったわけじゃない。夜空に浮かんだ三ツ星ベルトの巨人を見つけて彼がそう間違っただけ。僕も夜空をよく見上げるから、疎遠になっても毎年の…

そろそろ草木も眠る丑三つ時。 僕らは笑声を抑えながら、こっそり起きていれば良い。

ROSSOの新譜と市川拓司の新刊。あと数日後と数週間後には店頭に並んでいるはず。日々の糧にするには充分過ぎるアイテム。こんなにも先の事を愉しみに思うのはいつ振りの事なのだろうか。今は患いかけのナルコレプシーだって愛おしく思えるよ。

僕らが十の頃には、とっくに月の兎は絶滅していたし、サンタクロースだって大往生している。もっと巧い嘘で、いつまでも騙してくれれば良かったのに。改めて信じる事は難しいし、何より面倒くさいよな。 おかげで僕らの方が巧い嘘をつけるようになってしまっ…

季節のサイクルは巡る程にその周期を速めている。 いつの頃からそんなスピードについてゆけなくなったのだろう。 今も尚、夏が過ぎぬ君。 オイルの切れたライターのように、季節もまた空回りさせている。

フィルターを焦がした熱は、その指へと伝わる前に絶えていた。 知らぬ間に終わっていたのはそんな事くらい。夏に綴った挿話は次の季節へ跨ぐ事はなく、それぞれが句読点を付けて締めくくられる。 いつか読み返す為に、それが僕らにとって必要な事だった。 そ…

別に風鈴の情緒が分るようになった訳じゃない。 だけれど、たいして涼しくもない風が奏でるその音のおかげで、なんとか僕は生きているよ。 必要以上に照る太陽は今が夏だという事を分かっているらしい。大雨が通り過ぎたばかりのこの街でさえ、数時間後には…

空き缶を並べた後、打ち上げ花火のように高く蹴り上げた。 奇声、走る、跳ねる、また蹴り上げる。転がる事を止めない空き缶をいつまでも追いかける。 冷えたアスファルトに座り込み、歳相応に乱れた呼吸を整えながら、次の行動に移るまで月を見上げていた。…

何処かの国の男女が出逢えたのかなんて、別にどうでもいい話。 隔てる河など無いのに、その一目だけでさえも叶わず泣いている人間はどれだけいるのだろうか。

繰り返す事は永遠ではなくて、いつかは終わるものだと言う。 たぶん僕らは大袈裟につくられたローテーションの中で忙しく走り回っているだけなんだろう。いつも同じ場所で転んだり、勘違いしてさ。

感情が反映されない生活を送る事はよくあることで、そんなことにも慣れてしまっていた。だから何となく分かっていた。相変わらずな日々しか僕らに訪れない事を。そう、本当は淡々と淡々と日々を送っているよ。今までも、きっとこれからも。いつだって。 僕ら…

彼女の病名を聞いた時、医学に疎い僕らでさえその行く末が分かった。それほど有り触れていて、聞き慣れていて、どうしようもなくて、クソッたれで。 久々に逢う彼女は変わらぬ笑顔で迎えてくれた。僕らは話をした。とても古い話ばかり。僕らは彼女よりも上手…

僕はそれがいつになるのか分らないけれど「いつか」と口にした。 君もそれがいつになるのか知らずに「いつかね」と返した。 曖昧な言葉はウンザリだったけれど、あの頃の僕らには都合の良い言葉が必要だったのだと思う。今は何を約束したのかさえ覚えていな…

もう今月は会うのを止めよう。そんな台詞を同性に吐いて笑った。 六月に入ってからというものの、平日休日に関わらず僕らは幾度となく集まり、イングランドが負ければ絶叫し、ヒョードルが勝てば皆で殴り合った。ハミルトンがフリースローを決めた時、あのバ…

裸眼、右0.8、左0.01以下の視力。 僕の左目はレンズを通さなければ君を見ることが叶わない。 並んだ時、いつも君は右側にまわる。何故なのだろうと思っていたが、その理由をやっと教えてくれた。

雨雲が薄れ日の出と共に焼け始めた頃、やっと自由になる。 僕の居場所はこのタオルケットの中なんだ、いつもそう確信しながら眠りにつくのに、朝は必ずその居場所に蹴飛ばされている。僕を包んでくれていない。出勤時、憂鬱なのはそのせいなのだと思う。

ビルの屋上で空き缶に埋もれながら目覚める。 「なんでこんな場所に?」といった表情を見せ、誰もがそこにいる理由と経緯を覚えていなかった。たぶん星が綺麗に見えた夜だったからだとか、おまえの落とした財布を探す為だとか、そんな下らない理由を並べては…

最近は普通に起きているだけで夜が明けてしまう。睡眠時間が学生の頃の半分になった生活。人には「規則正しい生活を」なんて言われるが僕にとってこれがそうなってしまった。 あの頃の平均睡眠時間が六時間。一日の1/4。現在二十四歳。単純計算で六年間も寝…

五月最後の一日はその月を象徴するかのように蒸し暑く、僕は何かの罰ゲームみたいに乾いた咽を鳴らす。一秒一秒、終りに向かい新月が始まろうとしている。僕が知っているものは終わりの後に何も残らないものばかりなのに。 そういえば、色彩を恋しがっていた…

帰り際に聞くには冴えない台詞。 そうだよ。また一週間が始まってしまったんだ。

午前三時に聴こえるスズメの鳴き声。 朝と呼ぶには早過ぎる報せだ。きっと他の何かを伝えたいのか。それとも鳴いているのではなく泣いているのか。そのうち心配に思ったカラスがやって来るから。それまでは起きててあげるよ。

新しいスポンジで食器を洗い終えるとやる事がなくなってしまった。 暇潰しに聴くには勿体無いRAVENの音で何とか堪えてみる。その後のBonnie Pinkでやる事を思い出し、メールで「スポンジ変えたよ」と打ち送信をする。たぶん一時間後くらいには電話が鳴り「変…

数日に渡って同じ空模様だった。 梅雨前線が届かないこの街にもきちんと湿気と熱気は訪れる。傘をさす仕種すらマンネリ。濡れたまま歩くのも飽きてしまった。陽が見たい。渇きたい。報せの虹は要らない。いつのまにかに晴れてくれたらそれでいい。 煙草の先…

現在も十年前も。いつだって嗄れた声で騒ぐのは同じ。 「変わったな」なんて言われてもそれを受け入れるだけのキャパシティが出来る迄はこんな感じなのだろう。 僕らは懐かしがってばかりで、いつかは見失ってしまうかもしれない。明日が待っている事が憂鬱…

吐き気の原因は分かっていたので、とりあえず携帯電話の電源を切り応急処置。そんな逃げ方しか知らないんだなと君は笑うのだろうか。 世界は日なたに置かれたペットボトルの中。閉ざされたキャップ付近に群がる水滴が僕。暑くても他の出口を知らないから、い…