2006-01-01から1年間の記事一覧

浮かぶ月が優しく輝いていた、一年前の今日。 本当にそんな理由で「優月」と君に名付けた。だけれど、いつか色んな知識をつけた君に「なんか、後付けっぽい」と言われそうな由来だから、そのまま伝えようか迷っている。いつだって真実は懐疑の対象になるのだ…

時間は加速する。 どんな理由で笑い、泣いて、依存を覚えたとしても。あの頃の僕らが想像していた以上のスピードで、色や背景は、輪郭だけを置き去りにして褪せてゆく。止せばいいのに、誰かが君の好きだった唄を口ずさんだ。 懐かしさだけならすぐ傍にある…

例えば、首まで溺れながら「さよなら」を言葉にするように。 嘘は自分の為ではなく相手を想ってつくもの、なんていう定義がこの世界には確かに在るのだと思う。 今日という日に意味はないよ。 泣いている君が、許される側だなんて。

微睡んだ夜。隠れた月や星の代わりに三月最後の雪が降っていた。 突然、タイミングが悪いなあ、と君は肩でマフラーを持ち上げる。その台詞と唐突さを訝んだ表情で見る僕らに気づかないふりをして、煙草を続ける君。そういう誤魔化し方は良くはないよ、と君の…

「二十七歳なんて、まだまだだよな」 誰かの強気な台詞に意地の悪い返事だと思いながら、築二十七年目のマンションには住みたくはないよ、と笑った。 ずっと昔に引いた境界線があって、それを跨ぐ度に新しい境界線を定めている。限界は二十三歳まで、なんて…

自転車とすれ違う音。色めきだした街の姿だったり。 今さら時間の速さに驚かされたくはなかったな。そう呟く声に苦笑いを返した。いつからだったのだろう。春が訪れているのは、暦の中だけだと思っていたよ。 もしも本当に冬が終わってしまったのならば、君…

古い日々の続きを歩いている。 あの、どうしようもないほどに悲感を抱いていた日々の延長線上を。 信じられる?と訊いてくる君に僕は頷いた。意外そうな視線を向けるから、もう一度だけ繰り返す。そして「現在がどれだけ大事なのか、そんな事に個人差がある…