「有り難う」でもなく「ごめんね」でもなく、私たちは「さよなら」で別れましょう。そう思ったのだと話す君を誇らしいとさえ感じた。
男前だな、と笑う僕に、君は少しだけ口元を上げながら「褒められてるんだよね」と笑い返す。それから、何年続いたのかだとか、親公認のデメリットはこんな時ねだとか。態とらしく戯けて「そういえば三十路手前だったんだ!」という君の台詞にも自虐的だ!なんて笑い合っていたけれど、結局、最後まで彼のことを悪く言わなかったのは君らしいと思った。


悲しいのは、誰かがいなくなっても不変的な毎日を過ごしてしまう事。
夏が始まる前に、君から聞かされた理由のひとつだ。
上手く笑う必要なんてないよ。君はただ声を上げていれば良い。