「夏は終った」と君がいうから、何を根拠にそう思ったのか分からないけれど便乗することにした。急いで風鈴を外し、風情がないと嫌悪していた冷風機を片付ける。点し忘れた花火をバケツの水に浸しながら、暮れる陽の高さと速さを確かめて、薄らと滲んだ額の汗を拭った。
何だか次の季節が訪れているとは思えないな。僕がそう話すと「本当だね」と素っ気ない君の返事。やっぱり根拠がないんだな、そう苦笑ったあとで僕らはキスをした。すると、どこかの家政婦のように隠れて監視していた娘が「わたしもー」と駆け寄ってきたので、いつか僕らが嘘をつかなくてすむように頬で納得してもらう。彼女はどこで覚えてきた台詞なのか「あばんちゅーる、ね」と言って、僕らを笑わせた。