欲しいな、と思ってしまってから、ずっとタイミングを伺っていた。
そうして買ったばかりのチョークを彼女に手渡して、冷えたアスファルトの上に座り込む。不思議そうな表情のまま、手にした物を見つめる彼女に、こうするんだよ、と一本の白線を引いてみせた。奇声と感嘆。覚えたての拍手。要領を得たと彼女に描かれた何本もの線。君が描いた平凡なアンパンマンと、僕が描いた無難なドラえもんを、斬新かつダイナミックなキャラクターへと彼女がアレンジしてくれる。
そして、まだ曲線は無理なんだね、と僕らは笑った。