「二十七歳なんて、まだまだだよな」
誰かの強気な台詞に意地の悪い返事だと思いながら、築二十七年目のマンションには住みたくはないよ、と笑った。
ずっと昔に引いた境界線があって、それを跨ぐ度に新しい境界線を定めている。限界は二十三歳まで、なんて話していた頃を懐かしく思うよ。覚えていたくはなかった記憶だよな。
漠然と描いた未来に、何かがあると信じていたわけじゃない。
ただ、何かが欠けてしまうなんて想像出来なかっただけ。
本当にそれだけだったんだ。