自転車とすれ違う音。色めきだした街の姿だったり。
今さら時間の速さに驚かされたくはなかったな。そう呟く声に苦笑いを返した。いつからだったのだろう。春が訪れているのは、暦の中だけだと思っていたよ。
もしも本当に冬が終わってしまったのならば、君を象る言葉はどこにも着地をしなくなるのだろう。どんなに声を上げて嗄らしても、届く事も潰れる事もない。泣けば楽になるだなんて嘘だったよ。悲しい嘘だった。僕らはそんな事ばかり気がつくべきではなかったんだ。


アスファルトの歩き易さを確かめながら、本当は何ひとつ歩き出せていないんだと笑う。
それでも君を思い出す。君を言葉にするよ。