古い日々の続きを歩いている。
あの、どうしようもないほどに悲感を抱いていた日々の延長線上を。
信じられる?と訊いてくる君に僕は頷いた。意外そうな視線を向けるから、もう一度だけ繰り返す。そして「現在がどれだけ大事なのか、そんな事に個人差があるのは残酷だ」と君は笑った。
不意に表情を変えて手のひらを上に向けるけれど、雨雲は見つけられない。それでも君は「雨、かな」と戯けてみせる。あの日も今日みたいに高い位置で鳥が飛べる冬空だった事を、 君は覚えていますか?
寂しく思う日に限って、空は澄んでいるんだ。


確かなのは、誰もが互いの過去に戻れない事だった。
振り向くだけなら、こんなにも簡単なのに。