ちりんと、どこかの窓辺から聴こえてくる。
夏の終わりを見過ごしてしまったのは、そんな外し忘れた風鈴のせいなのだと思う。アスファルトに染み込んだ雨も、誰かが零した悲しみも、帰る雲を見失ったかのように漂う冷ややかな空気。街は夏の後ろ姿に誘われて、鮮やかさを褪せ始めているというのに。そうやって、ひとつひとつ言い訳を並べながら、君がいた頃を思い出していた。


「どんな言い訳でも私の確かな理由だから、」
懐かしい君の台詞と、その続きが好きだった。僕らはその言葉に擁護され、また僕らが言い訳を擁護する。分かってくれなくても伝えたい事ばかりを抱えていたのは、すぐ側に有りふれていたからだろう。ありったけを並べて、翳して、声にしたあの頃が、懐かしい日々に変わってしまうなんて、僕らはすぐに気づくべきだったのかもしれない。それでも僕は、見過ごしてしまった代わりに多くを忘れず生きているよ。


話したい事がたくさんある。少しだけ美化した、たった一年分の挿話だけれど。例えばそれは、風鈴のせいにした本当の理由だったり。