街を焦がす音。いつもは煩わしいと感じているのだけれど。
線香花火は中盤に味わうものだと僕は言った。君は最後を締めるものだときかなかった。毎年の様にこんな遣り取りを繰り返して、それを笑っている奴らがいる。分かっているよ。この後で怒った君は、鼠花火を放り投げるのだろう。そこまでが“こんなやり取りを繰り返して”っていうやつだから。それが愉しみなんだ。
一昨日よりも昨日。昨日よりも今日。そんなふうに陽の暮れてゆくサイクルが短くなってきて、夏は折り返しているのだと思った。
放たれた鼠花火は、僕らの目の前で大袈裟に砕け散った。尻餅をつきながら惰性的だと指摘をする。そこで君がロケット花火を持ち出すから、マンネリで良いんだと笑った。それが愉しいんだと笑った。