彼は「さようなら」と告げ、君は「またね」と手を振る。
そんな君の挿話がいつしか本筋に変わり、グラスに入れた三個分の氷が溶けてなくなる頃、依存はその頃から始まっていたのね、と君は結論づけた。僕はどのタイミングでそのことを指摘しようか迷っていたけれど、なるほど やっぱり答えは決まっていたのか、なんて変に感心をし、復習不足の自分を嘆いていた。
依存について深く考えたことはなかった。勿論、この挿話を聞いた後でもそうするつもりはない。きっと君も数少ない語彙の中で無造作に選んだ言葉だったのだと思う。だからこそ僕らは薄っぺらな響きに苦笑いをした。なんてことはない。雨の日と月曜日は気分が滅入るって、どこかの兄妹も歌っていたはずだ。

別れ際。今度は君が「さようなら」と先に言った。
「さようなら」。そして彼は「またね」と付け加えて手を振る。
君は振り向いて、奇麗な笑顔と下品な中指を見せてくれた。