時間は加速する。
どんな理由で笑い、泣いて、依存を覚えたとしても。あの頃の僕らが想像していた以上のスピードで、色や背景は、輪郭だけを置き去りにして褪せてゆく。

止せばいいのに、誰かが君の好きだった唄を口ずさんだ。
懐かしさだけならすぐ傍にある。つられて高揚する僕らに、いつだってその唄は優しいけれど、すぐに言葉は途切れてしまったよ。
何を探すわけでもなく見上げた空。雲は僕らがなれなかった緩やかな速度で泳いでいる。例えば千年、千年じゃ足りないか。もっと時間を費やして褪せてゆけたら良かったのに。そう笑った後で、また誰かが唄い始める。

君の為に用意した酒を飲みながら、そんな寂しさを誤魔化していた。