五月最後の一日はその月を象徴するかのように蒸し暑く、僕は何かの罰ゲームみたいに乾いた咽を鳴らす。一秒一秒、終りに向かい新月が始まろうとしている。僕が知っているものは終わりの後に何も残らないものばかりなのに。
そういえば、色彩を恋しがっていたのに、桜を見にへ行こうとしなかった。読みたかった本もあったのだけれど今ではどうでもいい。話したかった事だって、忘れてしまったままだ。
ほら、やっぱり何も残ってないだろう。


そうなってからでは遅いのだけれど、そうならないと気づかない事だってある。そんな言い訳をしそうになって口を噤んだ。終りの後で始まりを期待する方がどうかしている。