君の前では零せない涙だってある。
面倒な女の台詞でしょう。そう訊ねる君に、僕なら言われたくないな、と笑った後で「だけれど、意味がないよ」と返した。小さく頷いた君は「意味を考える前に、」と悪戯な表情を浮かばせて「理由を知ることが先だと思わない?」と続ける。君は気づいてほしいだけだった。彼が思うほど強くはないことを、だからこそ強がっていることを。
面倒な女の台詞でしょう。最前と同じ表情で君が訊ねてくるから「理由ならたくさん在りそうだし、代わりに僕が聴かされそうだな」と笑った。