2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

微睡んだ夜。隠れた月や星の代わりに三月最後の雪が降っていた。 突然、タイミングが悪いなあ、と君は肩でマフラーを持ち上げる。その台詞と唐突さを訝んだ表情で見る僕らに気づかないふりをして、煙草を続ける君。そういう誤魔化し方は良くはないよ、と君の…

「二十七歳なんて、まだまだだよな」 誰かの強気な台詞に意地の悪い返事だと思いながら、築二十七年目のマンションには住みたくはないよ、と笑った。 ずっと昔に引いた境界線があって、それを跨ぐ度に新しい境界線を定めている。限界は二十三歳まで、なんて…

自転車とすれ違う音。色めきだした街の姿だったり。 今さら時間の速さに驚かされたくはなかったな。そう呟く声に苦笑いを返した。いつからだったのだろう。春が訪れているのは、暦の中だけだと思っていたよ。 もしも本当に冬が終わってしまったのならば、君…